いちえ



声に振り返ると、夏希がドリンクを持って私の後ろに立っていた。


「うん。飲んでる。純平は?」


「あぁ、あいつは囲まれてる」


――…囲まれてる?



視線を巡らせてカウンターのようにセットしておいた場所を見ると、周りにはドレスを着た女の子がカウンターを攻めていた。


「…やったね。新規ゲットじゃん」


「おかげさまで〜」



そう言いながら、私の前に持っていたドリンクを置くと、慶兄の席へと腰を下ろした。


慶兄は、龍雅に連れられて宗太と瑠衣斗と共に俊ちゃんを冷やかしに行っている所だ。


「ありがと」



そう言ってドリンクに口を付けると、オレンジの味が濃いお酒だった。


「あのドレス、もものお袋さんのリメイクしたんだって?」


「うん。さすがに初めから作れなくてねぇ」



目の前には、龍雅が山盛りにお皿に乗せて持ってきたオードブルが並んでいる。



プチトマトを摘んで口に入れると、プチっと潰れる感覚が美味しい。


「大切なモンとかじゃなかったのか?」


「大切…ん〜…多分お母さんからしたらね」



きっと、母の形見になるんだろう。でも、ずっとしまいっぱなしももったいない気がした。


それに、わざわざ私に残してくれた訳でもないと思う。


「いいお袋さんだな」


「……え?」


「ももの母さんだよ」
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