いちえ



そう言われると、瑠衣斗が言うように従うしかない。


うーん?髪が長いから二枚用意してくれたのかなあ?


そんな事を思っていると、隣からシャワーの音が届いてきた。


その音を合図に、私は慌てて着ている物を脱いだのだった。


やっぱり、モタモタしてたらるぅを待たせる事になってしまうだろうし。


そうすれば、またロクな事を言われないに違いない……。


壁を隔ててはいるが、何となく初めての環境や、隣の瑠衣斗に胸がドキドキとする。


目の前に広がる折角の景色も、これでは楽しむ余裕もない。


心地の良いシャワーのお湯に、隈無く全身を洗う。


屋外ともあって、シャワーを止めると風が冷たく感じる。


浴槽に湯船が張られていないのは、やっぱりここを使う人が居ないからだろう。


こうして、湯船が入っていない所を見ると、何だか寂しくも感じてしまう。


それでも、きちんと掃除の行き届いている所を見ると、おばさんかおじさんが手入れをしているのだろうか。



そんな事を思いながらも、手を休める事なくシャワーを済ませた。


一通り済ませた所で、タイミング良く瑠衣斗の声が私に届く。



「ももー、あとどんくらい〜?」


「今、髪と体洗い終わった所〜!!」


あとは体を拭いて、下着と寝巻きを着ればバッチリだ。


私は洗ったばかりの髪をアップに纏めると、使った桶などを元の位置に戻す。


何とか瑠衣斗とタイミングを合わせる事にホッとしていると、瑠衣斗から思い掛けない言葉が飛び出す。


「おし、じゃーそっち行くから」

……そっち…?


そっち…………こっち!?




「なんでえ!?」
< 240 / 525 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop