いちえ



中学ぶり…?


「ずっと…来てなかったの?」


「ん?うん…高校から俺ら一緒だろう」



確かに…そうだけど。


たまに地元に帰ってきて、来たりしなかったのかな?


そう思ったが、すぐに帰ってきてしまうぐらいだし、なかなか寄ったりもしなかったのかな。なんて考えた。


「そうだね。高校は真面目に通ってたもんね」


「…俺が不真面目みてーな言い方だなあ」



高校の頃は、ほとんど休まずに通っていた瑠衣斗に、中学の頃によくサボっていたなんてなかなか想像できなかった。


よく寝坊して、ギリギリに来たりはしてたけど。



本堂の目の前の、石段のようなスペースに、瑠衣斗が腰を下ろし、それに続くように隣へ座った。


足元に、沢山の木の実が落ちているのを見つけ、私は1つ拾い上げた。


「何か…いいね。素敵な場所だね」


真上に掲げて、光を当ててみる。


木々で覆われているから、光なんて届かないけれど、私は掲げた木の実を見上げた。


「ちっちゃいるぅ…見てみたかったなぁ」


「は?何で?」



私に視線を向ける瑠衣斗に、私は木の実を見上げたまま口を開けた。


「きっと、可愛いんだろうな…って」



手のひらに、コロンと木の実を転がしてみると、絞り口を緩めたような日差しが、手のひらを温かく照らす。


それと同調するように、一瞬大きな風が吹く。


ザアザアと、木々が会話するように音をたてて、大きく葉が揺れ、雨の雫が私の頬や手のひらへ落ちる。



木々が揺れる度に、雲から顔を出した太陽が、葉の隙間から地上に明かりを届ける。


地面の一面に広がった、太陽の作った模様に、私はそれが魔法のように思えた。
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