いちえ
向かう途中、背後でどっと笑いが起こる。
少し気になったけど、とりあえずみんなの元へと必死に足を動かした。
たくさんの知らないおばさんやおじさんの視線と声に、笑顔で応えながらでも、たどたどしくなってしまう。
それでも何度か捕まりながらも、やっとゴールにたどり着く。
「人気者だなあ〜ももは」
「ね、何で2人共居るの?」
開閉早々、宗太の言葉を差し置いて、一番の疑問をぶつけてみる。
2人共、それぞれ別々に予定があったはず。
「あ〜俺は釣りに来た人達にどこから来たか聞かれて」
「俺も一緒だぜ!!あいつホントに地元の人達に可愛がられてるよなあ!!」
「う…うん…。よく意味が分からないんだけど」
やっと腰を下ろせた所で、宗太が簡単に説明をしてくれた。
どうやら瑠衣斗が、向こうの友達と一緒に帰省しているらしいと言う事が、瑠衣斗の家族はもちろん、由良さんのお店のお客さんや、ヨネさん、そして大輔さんのお母さんによって地元全体に伝わったと言う事。
そこに、女の子が1人居て、瑠衣斗がSPのごとく張り付いて目を光らせていると言う事。
それは大変だと、みんなで集まって、その子を見なきゃと計画され、集まったと言う事。
いわゆる、ちょっとしたお祭りらしい。
何か…すごい話がでかい気がするけど……。
「ももちゃん、あんなんでゴメンね〜。バカだけど、可愛がってやったって」
突然由良さんにそう言われ、分かりやすく顔が熱くなる。
おじさんもおばさんも、そんな私に優しく微笑む。
うう…そ、そうだ。付き合う事になった事、大々的に報告されちゃってたんだ。
「あ…あの、とんでもないです…」
窮地へ1人で乗り込んでしまい、恥ずかしさに身が縮む思いだ。
こんな時、どうしたらいいのだろう…。
恋愛経験の少なさに後悔しながら、逃げる事もできなかった。