いちえ
焦ったように私に向けられる視線に、私は笑いを噛み締める。
そんな目で見られても、どうしろって言の?
てゆーか、そんなに焦らなくても……。
「俺うざかったりすんの?」
心配そうな顔をしながら、そんな事を言ってのけた瑠衣斗に、私はついに吹き出した。
「ちょっ…そんな、そんな顔で言わないでよ」
「やっぱりうざいのか」
どうにも混ざらない会話に、おばさんとおじさんは楽しそうに成り行きを見守っている。
こんなにも素直に反応する瑠衣斗が息子なら、おばさんもおじさんも、楽に子育てができたのかなぁ…なんて思う。
どうすればこんな素直な人になるのか、小さな頃の瑠衣斗が見てみたい。
それにしても、瑠衣斗は口数が多ければ多い程、昔からそのキャラを濃くしてしまう。
いつもは口数が少ないせいか、時々ビックリしてしまう程、驚きの発言をしたりするんだ。
「うざい訳ではないけど…」
そう言う私の言葉でさえも、納得いかないようで。
苦笑いする私に、瑠衣斗が何とも言えない表情で私を見つめる。
そんな顔されても…分かんないって。
「はーくん、るいすきだよ〜?」
その時、幼い声が間に入ってくる。
パッと視線を向けると、少し心配そうな顔をした隼人君。
そして、瞬きを繰り返している瑠衣斗。
次の瞬間には、じっと隼人君を見つめた瑠衣斗が、ふわりと優しく表情を崩す。
3歳児にまで心配かけてしまう程、その表情に偽りなんてないのだろう。