いちえ
「た…たこさん」
「…タコじゃねえ」
何となく気まずくて、ポロリとそんな言葉が口からついて出る。
まさか付き合って早々に、こんな話題に触れるとは……。
隼人君の大きな置き土産に、分かりやすく動揺するしかなかった。
「にしても、どーゆう経緯でそうなったんだよー!!」
「私も聞きたいっ♪」
そこに更に追い討ちを掛ける、龍雅とおばさんの言葉。
周りは帰る準備をしていたり、まだ雑談をしたりしている。
注目されていないだけホッとするが、そこに瑠衣斗のお母さんが入ると話は別だ。
「言わねーよ。とりあえず帰るぞ」
「え〜。お母さん、どうやって瑠衣が、ももちゃんをゲットしたのか知りたい!!」
「ゲッ……何だよ。まるで俺なんかがどうやって、としか聞こえねえんだけど」
「あら、さすが瑠衣ね。鋭い」
「…そーゆうニュアンスでワザと言っただろうが」
実のお母さんにまでいじられる瑠衣斗って、やっぱりいじられキャラなんだろうか。
ようやく重い腰を上げ、おばさんはやっぱり瑠衣斗に絡みながら、おじさんがそんな様子を楽しそうに眺めている。
「おい瑠衣。近い内連絡する」
「お、分かった。じゃーな」
どうやらまだ飲んでいくらしいメンバーの中から、大輔さんがそう瑠衣斗に声を掛ける。
何となく見つめていた私は、そんな大輔さんとバッチリと目が合い、思わずペコリ頭を下げた。
顔を上げてそっと様子を伺うと、大輔さんはとても愛嬌のある笑顔で手を振ってくれたのだった。
そうして、時々声を掛けられながら、私達は座敷を後にした。
みんなに見送られながらの退場は、何とも恥ずかしい物だった。