いちえ
素直…素直に…?
何も言えない私は、瑠衣斗をじっと見つめる事しかできない。
「まあ…素直じゃねえ事ぐらい、重々承知だけどな」
クシャっと私の頭を撫でた手が、そのまま頬に添えられる。
顔がぽっと熱くなり、瑠衣斗の視線から逃れるようにして思わず伏せてしまう。
そんな私の頬を、添えた手で優しく触れる瑠衣斗の、ふわっと笑う気配が伝わる。
「俺…すげえももの事好きなんだけど」
「…え?」
言われた言葉にフッと顔をあげると、穏やに笑う瑠衣斗と目が合う。
胸がギュッとして、嬉しさに震える。
引き寄せられるようにして、優しく落とされた唇が、私を虜にしてしまったようにして離さない。
存在を確かめるように、何度も何度も落とされるキスに、甘く胸が締め付けられた。
「今日は…隼人にまで妬く所だった」
唇が離れないまま、ポツリと瑠衣斗が呟く。
表情が見えないものだから、瑠衣斗がどんな顔をしているのかさえ分からない。
隼人君…隼人君にまで……るぅが嫉妬?
「でも…やっと紹介できて、…俺のって言えて嬉しかった」
子供っぽかったり、物凄く大人っぽかったり、瑠衣斗は私を惑わせてばかり。
でも、それのどれもが全部瑠衣斗で、その全部が私は大好きなんだ。
そっと距離を置き、瑠衣斗を見つめる。
至近距離に迫る瞳から、私は目をそらす事なんてできないんだ。
「るぅ…今日嬉しかった。…ありがとう」
何だか胸がスッとして、胸の締め付けがなくなったようだ。
こんなにも人に想われる事が、幸せだなんて知らなかった。
一瞬目を見開いた瑠衣斗に、私は自分からキスを落とした。
蜜のような甘い口付けに、私はそのまま溺れてしまうのだった。