いちえ
「な〜んだ。つまんな〜い」
ピッタリと腕に絡むりなさんは、頭を男の人の腕にもたれ掛け、唇を尖らせた。
彼氏…かな?
別に用がなければ、早く行きたいんだけど……。
「えと…じゃあ、これで……」
「えー!!待ってよぉ♪」
「はあ…何か……」
チャラチャラしてそうな容姿の男の人は、そんな私達の様子を見ながらいやらしく笑いを漏らしている。
歳は同じぐらいだろう。
「私、るいに振られちゃったんだよねえ〜」
「…え?振られ……って」
何故私にそんな事を言うのだろう。
それに、腕を絡めているその男の人は、彼氏ではないのだろうか。
そう言いながらも、りなさんは笑って言うだけだ。
「ももちゃんを傷付けるヤツは許さねーって言われちゃって!!まじ最悪〜」
目の前がチカチカした。
りなさんが言う言葉が、頭の中で反響するようだ。
どう言う…意味……??
訳も分からず、ただ驚いてりなさんを見る私に向かって、りなさんが楽しそうに口を開く。
「あんたなんか居なければ良かったのに。つまんなーい」
「………」
聞いたこともないようなりなさんの低い声に、驚いて声も出せなかった。
なに……この子。
何とも言えない恐怖感が沸き起こり、口も開けられない程ただ呆然とした。
「消えてよ。あんたなんか誰も必要になんて思ってねーよ。パパママと一緒に死ねば良かったじゃん」