いちえ



「な〜んだ。つまんな〜い」


ピッタリと腕に絡むりなさんは、頭を男の人の腕にもたれ掛け、唇を尖らせた。



彼氏…かな?



別に用がなければ、早く行きたいんだけど……。


「えと…じゃあ、これで……」


「えー!!待ってよぉ♪」


「はあ…何か……」



チャラチャラしてそうな容姿の男の人は、そんな私達の様子を見ながらいやらしく笑いを漏らしている。


歳は同じぐらいだろう。


「私、るいに振られちゃったんだよねえ〜」


「…え?振られ……って」



何故私にそんな事を言うのだろう。

それに、腕を絡めているその男の人は、彼氏ではないのだろうか。



そう言いながらも、りなさんは笑って言うだけだ。



「ももちゃんを傷付けるヤツは許さねーって言われちゃって!!まじ最悪〜」



目の前がチカチカした。


りなさんが言う言葉が、頭の中で反響するようだ。



どう言う…意味……??



訳も分からず、ただ驚いてりなさんを見る私に向かって、りなさんが楽しそうに口を開く。



「あんたなんか居なければ良かったのに。つまんなーい」


「………」



聞いたこともないようなりなさんの低い声に、驚いて声も出せなかった。


なに……この子。



何とも言えない恐怖感が沸き起こり、口も開けられない程ただ呆然とした。



「消えてよ。あんたなんか誰も必要になんて思ってねーよ。パパママと一緒に死ねば良かったじゃん」
< 65 / 525 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop