良と遼〜同じ名前の彼氏〜
あたしとお母さんの戦いは始まった。

こうなったら全面戦争だ。


お母さんの反応は面白いくらいに予想通りだった。


「奈美!そんな格好して何処へ行くのよ!」


バッグを掴まれたあたしはバランスを崩してその場に倒れ込む。


昼ドラかよ。
ベタな演技だな。


あたしはお母さんをキッと睨むと


「こんな家いてやるもんか!」


と言い放った。


「待ちなさい!」


またバッグを掴まれそうになったので、お母さんの手を振り払ってあたしは階段を駆け下りた。


スェードのブーツを履いて、日の落ちた住宅街に飛び出す。


ガツガツ足音をたてて、息を切らせて進む。


すぐさま舞子に電話した。


ワンコールですぐに舞子の声が聞こえる。


「もしも〜し」


「もしもし舞子?今何してる?」


「おうちにいるよ〜どうしたの〜?」


「今から駅前に飲みに行かない?」


「今から〜?いきなりだなぁ〜」


「駄目かな?」


「なんかあったの?
今からだと一時間位かかっちゃうけど平気?」


「うん!平気!全然大丈夫!」


舞子ののんびりした声を聞いていたらあたしはなんだか落ち着いてきた。


「ありがとう。じゃあいつもの南口のエスカレーターの前で」


「りょうか〜い」


電話を切ると、あたしはふぅっと息を吐いた。


もう一度吸うと夜の澄んだ冷たい空気が身体に入り込んでくる。


汚れた心が浄化されてくみたいだ。


さて、あたしこれからどうしよう。
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