良と遼〜同じ名前の彼氏〜
「嫌……っ」


思わずあたしは顔を背けた。


嫌だったんじゃない。
勇気がなかった。
本当は今すぐにでも遼平とキスがしたかった。


遼平の右手はあたしの左手を離れ、頬を伝う。
頬から首、肩からわき腹へ熱い手が這っていく。

あたしの額に遼平の唇の感触が伝わってきた。
感触は瞼へ移り、耳を刺激していく。


手の平が腰のラインをなぞりながら上にあがり、あたしの胸に触れたその時、


「嫌!嫌だ!やめて!」


あたしは叫びながら遼平の体を押しのけていた。


心臓が壊れてしまいそうで、我慢の限界だった。


遼平は手の動きを止め、それ以上は進めようとせずにしばらくあたしを見つめていた。


けれどすぐにため息をつき、「あっそ」と言うと体を離してドサッとあたしの隣に寝転がった。


何も言わない遼平の横であたしは荒い息を整えながら、なぜか泣きそうだった。


瞳いっぱいに溜まった涙は、遼平の


「ごめんな」


という言葉で一気に溢れ出した。


どうしてこんなに涙がでたのか自分でもよく分からなまま、あたしは泣いていた。
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