良と遼〜同じ名前の彼氏〜
泉森公園から遼平の家までは、歩いて40分はかかる。
その長い雪道を、あたし達は足元をザクザク鳴らしながら歩いた。


遼平はあたしの持っていた、緑のチェックの傘をさしている。
あたしが腕を回すと


「バカやめろ」


と言ったけど、顔は笑っていたから、あたしは遼平と腕を組んだまま歩いた。


「ねぇ遼平」


「ん?」


「ジャージで寒くないの?」


「下に着込んでんだよ」


「ジャケット着ればいいのに」


「バカ、オシャレは我慢なんだよ」


「あはは、なるほど」


「奈美、腹減らねえ?」


「減ったぁ〜」


「作って」


「サトちゃん直伝のひじきでいい?」


「最高。その選択正解」


あの遼平の部屋の布団の中のように、あたし達の間に流れる空気は温かった。


そのぬくもりには、まるで幸せなおうちにいるみたいな安心感があった。

あたしと遼平はそうなんだ。
寂しがりやで不器用なあたし達だけど、二人でいると心が強くなる。
お互いにとっての「心強い」存在だったんだ。
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