空色パステル

―願い



時は流れ、街も
クリスマスに色付き出す頃―…






「Merry X'mas!!」



カチン
と景気のいい音が鳴った。


シャンパンではなくシャンメリーを片手に乾杯。






今年のクリスマスもお父さんはいない。

どこをほっつき歩いてるんだか
あたしにはわからない…



だけどお父さんが
遊び歩いていることはわかる…






聖夜だから、
誰もこの話題には触れない。






テーブルの上に並べられたご飯が
早く食べてほしそうにしている。



「ねぇねぇ、
ご飯食べちゃだめ??」


奏斗が訊ねる。
少し腹が立った。笑


あたしも早く食べたい


だけど、お母さんの気持ちもわかるから
何も言わない。




お父さんはお母さんの大好きな人。



好きな人を待って、一緒にご飯を食べることが
どれだけ楽しみかあたしはわかる。





お母さんの思いがわかるからこそ
わがままなんて言えない…


それでもお母さんは、笑顔を作って

「食べよっか」

と言った。




大喜びで食べ始める奏斗と陽菜。





お母さんはまだ食べない。

それでも信じていたいの…?





「もう信じなくていいんじゃない?」



あたしの言葉に驚く。





「だから~
早く食べちゃえ!!」



なげやりになる。

だけど、お母さんには
笑顔でいてほしいから
精一杯の後押し。




「美緩、ありがとね

いただきます」




やっと食べ始めたお母さん。

あたしと奏斗と陽菜は満面の笑顔。




そして…

4人で



『Merry X'mas!!』





幸せなひととき。







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