空色パステル

―扉の向こう




あたしは夢を見た。


扉が二つ、あたしの前にあって
あたしは立ち尽くしていた。



地面には紙がある。
『どちらかを選び、扉を開けろ
選んだ先が、己の未来だ』


と書かれていた。




どちらか、と言われても
先が見えないなら選びようがない…


一つは、水色をした空のような扉。

もう一つは、オレンジ色をした太陽のような扉。



両方、あたしの好きな色。


あたしは………
どちらを選んだらいい?







迷っていると、誰かがあたしの横に現れた。


あたしの右手を握る。


おそるおそる、隣を見ると……



あたしは驚いた。







あたしの隣には、別れたはずの拓弥がいた。





『美緩』




拓弥があたしを呼ぶ。




なんで……?
今更なんて……

遅いよ…



どうして…??




「…めて…やめてよ……!」


あたしが叫ぶと、
拓弥はとても悲しそうな顔をした。





「…美緩」

拓弥はそう言うと、あたしを抱き締めた。



あたしより背が高い拓弥は、
とても包容力があって温かかった。

そして…不思議と居心地がよかった…



「ちょ……拓弥…?!」


あたしが離れようともがけばもがくほど
拓弥の腕の力は強くなる。



強く抱き締められるほど、離れられなくなる…


呼吸ができなくなって上を向くと
拓弥と目が合った。


視線を反らした瞬間…
あたしの唇を拓弥が奪った。



「…ん……?!?!?!」



突然の出来事に頭が真っ白になる。


拓弥の手があたしの首にまわる。

そして、あたしの唇に全てを押し付けてくる。



重さに耐えられなくなるほど
強く甘いキス―…。



こんなキスは久しぶりで、
どこか懐かしかった。




意外と嫌ではなかった。


だけど……






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