空色パステル


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「これ、食べて??」



一週間なんてあっという間に過ぎて
早くもバレンタインデー当日。



まさに今、
遼に手作りチョコを渡している最中。


いつも通りの無邪気な可愛い笑顔で

“ありがとう”

と言ってくれる。





その笑顔につられて
気付けばあたしも笑顔になっていた。




少し照れてる遼。


「…お返しあげるから」

「うん★楽しみにしてるね」




二言三言話してから、家路についた。







「ただいまあ…」

誰もいない家。
せめてバレンタインくらいいてよ、とも思う。


ふと自分の部屋に目をやると、
あたしの机の上に拓弥宛のチョコがある。



「……あ、チョコ…」

呟いた瞬間、携帯が鳴った。


心臓が高鳴る。

この着信音は………



拓弥のだから。





ずっと待ってた着信音。

…だけど、鳴るのが怖かった着信音。



でも、やっぱり待ってしまう。

それは…拓弥が好きだから?


わからない。



鳴り続く携帯を手に取り、
通話ボタンを押す。




「…もしもし?」

『―あ、もしもし?
俺だけど…』


あの時と変わらない低く優しい声。

あたしを少し、ドキドキさせる。



「…拓弥……。
久しぶりだね…元気してた?」

『―おう、久しぶり
バリバリ元気★』

「そっか^^
……あのさ、拓弥……?」

『―ん?どした?』

“会いたい”


あたしの口をついで出た言葉。


『―それ、俺のセリフなんだけど…笑
俺も会いたかったから電話した』

思いがけない返事にあたしは驚いて
言葉が出なかった。





「……今から会えるかな?」

『―うん^^
……じゃあ、バスターミナルで待ってる』

「わかった、
じゃあまたあとで♪」



電話を切った。




あたしは着替えて、バスターミナルへ向かった。








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