ツンデレラは王子の夢を見る



「そういえば、まっひー!古典の宿題やったー?」


「とりあえずはやったけど、みんなやってなさすぎでしょ」


「…みんなって?」


「城市くん、とか…」


「えーっ!?ちょっと、まっひー!いつの間にそんな仲良しにっ…!」



もご、と麻尋の手によって梨々の口が塞がれてしまいました。




「梨々、うるさい!」


「ご、ごめん…」



梨々は申し訳なさそうに眉毛を下げて、しゅんとなってしまいました。



そんな梨々を横目に、麻尋は制服のセーターで口を塞いだ手を拭います。



麻尋の無意識な行動に梨々は、軽くショックを受けました。


しかしそんなことが麻尋に通じるはずがありません。




「…城市くんも終わってないんだぁ…じゃあ、まっひーが見せてあげればいいじゃーん♪」


「…は!?」


「好感度アップにも繋がるし?あ、もちろん私も見せてもらうけどね!」



……“好感度”



なんて素敵な響きなのでしょう。


もしかしたら、昨日麻尋がとってしまった冷たい態度が帳消しにできるかもしれません。




麻尋はごくり、と息を飲んで、古典のノートを鞄から取り出しました。




「……あの、城市くん」


「ん?」



ふいに、パッと譲が振り返りました。



「…!(う、わ!)」



心臓がドキドキします。


顔が反射で真っ赤になっていくのに、麻尋は焦りました。



(…どうしよう、バレる!)



「…桐谷、どした?」


「………なんでもないっ!」



麻尋は、自分のドキドキを悟られないようにとった行動のつもりでした。



しかし麻尋の目の前には、譲のびっくりした顔があったのです。




(……あぁ、まただ、)




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