ツンデレラは王子の夢を見る



麻尋は、ただ彼に喜んでもらいたかったのです。


それなのに、自分にできるのは、彼を不快にさせてしまうことばかり。



今だって、本当は彼のかっこよさにあてられて声が出なくなってしまっただけなのです。



しかし、こんな恥ずかしいことをバカ正直に口にするなんて麻尋のプライドが許しませんでした。


第一、素直になることが苦手な麻尋には口に出せそうにはありませんが。




「……………」



悲しくなった麻尋は、俯いて口をつぐんでしまいました。




「…桐谷?」


「……やっぱ、なんでもないっ!間違った!」


「…もしかして、宿題オレに見せてくれようとしたの?」


「………………」




(あー…恥ずかしい)



俯いたまま、ぎゅうっとノートを握りしめる麻尋。


言葉にしなくても、譲に伝わったことが本当はすごく嬉しかったのです。




「見せてくれるとすげー嬉しいんだけどね?」


「……そんなに見たいなら見せてあげなくもないけどっ!」



俯いたまま、ものすごいスピードで麻尋はノートを差し出しました。



「ありがと。優しいね、桐谷」


「…(…!)うるさい、バーカ!」




麻尋は、とっさに顔を上げました。


そんな麻尋の視界に飛び込んできたのは、譲のにんまりとした優しい笑顔。




「…あ、真っ赤だ」


「うるさい…っ!」



(あんたのせいだ…!)



真っ赤になって、湯気でも出そうな耳を麻尋は必死に横髪で隠しました。




(……優しいのはどっちだよ、)



心臓はバクバクと自己主張してうるさいです。



この人といると、心臓が何個あっても足りないんじゃないかと、麻尋はいつも思うのでした。




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