ツンデレラは王子の夢を見る



―…そして、放課後。


麻尋の1日で1番楽しみな時間がきます。



それは、図書室からテニス部の練習を眺めることです。


まぁ、簡単に言えば部活をする譲の姿が見たくて、もうずっと図書室に通いつめているのですが。




今日も、図書室に入ると適当に本を取って、定位置に座ります。



1番窓際の日当たりがよくて、尚且つテニス部から死角になる場所。


それが麻尋の定位置でした。




今日の麻尋が選んだのは、最近ずっと読んでいる恋愛小説です。



シンデレラをモチーフにしたありがちな話でしたが、少しでも自分の恋の参考になれば…と読み続けているのでした。




“まっひーは、ツンデレラだよね!”



麻尋の耳に、いつか梨々に言われた言葉が蘇ります。



でも、麻尋にはよく意味が分かりませんでした。



だって自分はお姫様なんかじゃないから。


たとえお姫様でも、私みたいな性格じゃハッピーエンドは迎えられないもん。




「おい、譲ー!」


「はいはい、オレ打つ!」



外から聞こえてきた彼の名前に、麻尋はとっさに反応しました。



視線を向けた方向には、赤い練習着に身を包んだ譲の姿。


ペアと楽しそうにラリーをしています。




(…やっぱ、かっこいいなぁ…)




この小説に例えると、主人公の思い人である王子は、間違いなく彼だ。


自分と違って、王子でも申し分のない人だもん。




麻尋は小説を読むたびに、譲との差を感じてしまって少しだけ落ち込んでしまうのでした。




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