ツンデレラは王子の夢を見る



「―…やったね、まっひー♪見てたけどいい感じだったじゃーんっ!」


「梨々……」


「ん?」


「どうしよう…城市くん、すっごいかっこよかった…!」




そーかそーか、と梨々は麻尋の頭をなでます。


麻尋が譲にひそかに片思いをしていたことは梨々しか知らないのです。




「“桐谷、優しいね”って笑ってくれた…!」


「へーっ!意外に仲良しなんだね」




こんな麻尋を見て、梨々はいつも静かに思うのです。



麻尋のこの姿を、譲にも見せてやりたい、と。


そうすれば、いつも素直になれないこの子がどれだけ彼を好きか思い知らせてやれるのに、と。




「…あんな人がほんとに彼氏でいいのかな……」


「んー…どうだろうねぇ……って、え!?」


「え?」


「まっひー?今、何ておっしゃったのですか?」




そうなのです。



告白された麻尋は、気が動転して飛ぶように家に帰った後、ベッドに潜り込むんでしまいました。



悶々と悩み続けた揚げ句、気付いたら朝だというオチを迎えてしまったので、結局誰にも言っていませんでした。



となれば、当然、梨々も知る訳がありません。




「酷いよ、まっひー!私、そんなの聞いてない!」


「あー…ごめんってば…」




ぽつりと呟いてしまった麻尋の運が悪かったのか。


麻尋は、いろいろ奢らされて全てを吐露させられるはめになってしまったのです。




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