プライダル・リミット
「よぉ」
「ど、どうも」
「奇遇だなぁ」
「ホ、ホントですね」
「お前、どーしたんだよその汗。ビショビショじゃねぇか。もう冬だぜ。ここそんなに暑いか?」
(冷や汗だよ!)
「いや~、エアコン効きすぎてるのかなぁ」
「そうか。じゃあ俺が車掌に言ってきてやるよ。エアコンの温度下げろって」
「い、いや、大丈夫です」
「遠慮すんなって。ちょっと待ってろ」
「いいですいいです。ホントに大丈夫ですから!」
(事を荒立てないでくれぇぇぇ!!)
「ホントにいいのか? そのまま外に出たら風邪引くぞ。せっかく人か心配してやってんのに」
(それを余計なお世話って言うんだよ!) 
「でもホントに大丈夫なんで、はい」
「オマエがそう言うんなら別にいいけどさ」
 マキオは顔を引きつらせながらも必死で男の行動を制止して安堵の胸を撫で下ろした。のも束の間――







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