プライダル・リミット

「お前、ウチどこ？」
（ウチぃ？　まさか家に来る気じゃないだろうな？　冗談じゃない！　だとしたら本当のことは答えられない。どうしよう……。そうだ！　こっちから先に聞けばいいんだ。コイツの家がわかればあとはテキトーに回避できる）
「アナタはどちらにお住まいなんですか？」
「俺？　俺は下北沢。ライブハウスの聖地よ。で、お前はどこなんだよ？」
（下北沢？　路線は違えど高円寺からは近からずとも遠からず。ここは万全を期して遠くて乗り換えが必要な駅……）
「わ、蕨です」
「ワラビ？　どこだよ、そこ」
（どこ？　どこだっけ？　鉄道路線図を眺めてる時に難しい漢字だったから目についただけなんだけど……確か……浦和と赤羽の間だったような……。てことは……埼玉県か！）
「埼玉県です。埼玉県の浦和と赤羽の間くらいです」
「埼玉かぁ。ちょっと遠いな」
（よしっ、諦めたか）
「赤羽って埼玉じゃなくて東京だぜ。それに浦和と赤羽の沿線で秋葉原から乗るなら京浜東北線一本で行けるはずだけどな」
（しまったぁぁぁ！　ダブルでしまったぁぁぁ!!　赤羽を埼玉県に含めた表現をした挙句、秋葉原からの路線を見落としてしまったぁ！）