【番外編集】オレンジ色の奇跡

 そんでもって、捕まっていたあたしの手首を頭上へ持ってくる。

 ……あたし、何かお気に召さないことでも言いましたかねぇ?

 枯れることの知らなかったはずの涙はピタリと止まり、懸命に瞬きを繰り返す。

「こ、うた?」

「2ヶ月半、会えなかったことに対して俺が何も言わなかったことに怒って、で、俺が不安にならないのかと逆に不安になった」

「……うん」

「寂しかったんだろ?」

「うん」

「じゃあ、なぜ、今日電話に出なかった?」

「それは!単純に気付かなかったの!」

「ほーう。車ん中では、俺を馬鹿扱いしココまで運ばせ、最後にはドS、変態、自己中呼ばわりしたなあ?」

「してな――」

「したよな?」

「しました! しましたよ! でも、本当のことじゃないっ!」

「どの口が言ってんだあ?」

「……んぅっ!」

 久しぶりにするキスは多少強引だったけど、すごく幸せな気分。

 ああ、ここに耕太はいるんだって。

 ほんのちょっと、耕太の気持ちに触れただけで安心する。

 耕太の身体は、あたしに負けないくらい熱くて……。

 いつもより、たくさん名前を呼ばれてた気がしてなんだか嬉しくなったんだ。


 ◇◇◇
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