【番外編集】オレンジ色の奇跡
「勝手に決めんなよ」
「え?」
あたしの両手首を片手で掴み、違うほうであたしの頬を優しく撫でる。
「誰の所為で、早めに単位とったり、仕事を早く片付けたと思ってんの?」
「………っ」
「それにクリスマス、家の用事はないんだろ?」
頷きながらポロポロというよりボロボロと涙を零すあたしに耕太は笑っている。
涙を拭おうと、手を動かそうとしたがガッシリ耕太に掴まれていた。
「で?」と話を戻した耕太は、黒縁眼鏡を持ち上げる。
「あたしが、他の男に目移りするじゃないかって不安になる?」
「梨海が俺以外の男に目移りする理由を教えろ」
「それほど、自信があると」
「お前の行動、感度を把握できるのは世界中探しても俺くらいだろ」
「……はあ」
つまり、あたしを信じてくれていると受け取りますよ?いいですね?
でも、自然と不安ではなくなった。
ちょこちょこと動いて、耕太の肩に額を乗せる。
「……会いたかった。……寂しかったの」
このまま、優しく強く抱きしめてもらえると思ったのが大間違いだったみたい。
『優しい』の『や』の字も見せない強さで、耕太はあたしを倒す。