夢見月夜に華ト僕<連載中>

一線




サクラとの再会まで、俺は一抹の不安に襲われ続けていた。


ヤツの軽薄な言葉が、耳にしつこくこびり付いて離れない。



サクラは今頃、どうしているのだろう?

ひょっとしたら、すでにあそこには居ないかもしれない。



だったら、サクラはどうなる……?


冷えた夜街をさ迷うのだろうか?

また誰か見知らぬ男の元に、身をおさめるのだろうか?



もしかしたら、サクラはもう、あの公園には来ないんじゃないか。



そんなに心配なんだったら、あの古びた扉を叩いて、確かめてしまえばいいのに、とも思う。


けれども俺は、どうすることもできず、ただひたすら、サクラの笑顔を思い浮かべ、案じるだけだった。



自分の中だけでは、解決策を見つける術などあるはずもなく、不安が募るばかりだというのに。



俺は、その後に自分が取るべき行動に戸惑って、怖気づいていたのだ。


サクラを救い出すことはできるのか。

そもそも、どうしたらサクラを救い出すことになるのだろうか。



怖くて、身動きできない自分が、情けないとわかっていながら、どうしようもなかった。



そうして、無意味な深憂を繰り返しているうちに、いつもの金曜日が訪れる。


< 64 / 114 >

この作品をシェア

pagetop