夢見月夜に華ト僕<連載中>
公園までのわずかな距離。
その足取りは重かった。
怯えながら、恐る恐る覗いた公園の中で、サクラの姿を探す。
ゆっくりと薄暗い辺りを見渡して、いつものベンチに、サクラの影があることに、俺はほっと一息漏らした。
今日は、言葉のないサクラとの約束が始まってから、ちょうど、2ヶ月が経とうという夜だ。
心地いいくらいの、ちょうどよく冷えた夜風が、体を撫でていく。
「カイ!」
俺の姿にすぐさま気付いたサクラは、身を乗り出して大きく手を振る。
稚気なその仕草に、俺の足取りはさらに重くなる。
俺の心の中を皮肉るような、雲ひとつない晴天。
星はまばらだけど、月だけは、この手で掴めてしまえそうなほど、その輪郭をはっきりと主張していた。
昨晩は、満月。
欠け始めた月が、沈んだ俺の心にのしかかる――
「なぁ、サクラ」
「何?」
何も知らない笑顔を見せるサクラに、どうしようもなく胸が痛む。
「サクラは、どんな月が好きだ?」
ベンチに腰を据えて、月を見上げていたら、ふと聞いてみたくなって、俺は何の気なしにたずねてみた。
「どうしたの?いきなり」
サクラは相変わらずの微笑みを、俺に向けてくる。
俺はバツが悪くなって、なんとなく目を逸らせてしまった。