妹の恋人は姉の彼氏の従弟

大会の会場

「彰吾にすっかり懐かれたな」

腕を組んで立っている廉人さんに
楽しそうに言われた

「はあ」

私はため息のような返事を返した

私のスポーツバックを持って立っている海堂彰吾は
記者やファンの女子に囲まれた

中学生だよね?
北海道から来た来年高校受験の
若者だよね?

扱われ方がまるでプロの選手みたいだ

色紙を持っている女性には
律儀にサインをしていた

「従弟は有名人?」

「そうみたいだな」

車で送ってくれた廉人さんは
隣に立っているお姉ちゃんの手を握った

「行くか?」

優しい口調で
お姉ちゃんに話しかける

「え?
紫音は平気?」

お姉ちゃんは心配そうに声をかけてきた

「あとはチームメイトと合流できれば
いいだけだから」

私はお姉ちゃんたちと別れた

海堂彰吾は
礼儀正しく記者の質問に答えていた

しかも日本語を覚えたばかりの外国人のように
単語で!

もしかして
海堂彰吾という男は
人見知りが激しいのか?

緊張していると単語になるとか?

まさかね

私は海堂彰吾が作った人の輪から
外れると
入口から入ってくる選手たちに目を向けていた

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