妹の恋人は姉の彼氏の従弟
「汗くさっ」

試合が終わり
肩に鞄をかけると
私は携帯のメールを確認した

お姉ちゃんから先に帰るという
メールが入っている

会場の駐車場には
ホテルまで乗せていってくれるバスが
待っていた

私はホテルに行かないから
バスの乗り口まで
部員の見送りにきていた

「一人で帰れるか?」

加藤先生が心配な眼差しを向ける

「平気ですよ
迷子になりそうなら
親戚に連絡しますから」

バスに乗ろうとしている先生に
私はほほ笑んだ

「あそこに立っているの
もしかして親戚の人?」

加藤先生は顔をあげると
会場の入口を見た

私は振り返ると
背の高い大男に目がいった

「海堂彰吾」

私がぽつりとつぶやくと
加藤先生が目を丸くした

「木下は海堂の親戚なのか?」

将来ね
…と心の中で呟く

それよりも先生も
海堂彰吾を知っているのに驚いた

「海堂彰吾を知っているんですか?」

「滅多にいない天才プレイヤーだって噂だ
我が高もたぶん、彼にスカウトしているはずだ
名門校じゃないし、来ないと思うが…」

有名人だったんだ
どうりで
記者や女性に囲まれるわけだ

「どうして彼がここに?」

「わざわざ試合を見に
北海道から出てきたみたいですよ
私のお世話になっている親戚の家に
来てました」

「木下!
うちの高校に来るように
言ってくれないか?」

「名門校じゃないって言ったくせに?」

「いいから
言うだけ、言ってみてくれ」

加藤先生は私の
肩を叩くとバスに乗り込んだ
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