妹の恋人は姉の彼氏の従弟

大会前日の夜

「おい」

背後から野太い声が聞こえてきた

洗濯が終わり
乾いたジャージとユニフォームを
スポーツバックの中にしまっている
私の背後に立った大男が見下ろしていた

「風呂」

「はあ…」

「入った」

「…だから?」

「次」

「次?」

「入れ」

単語で言うな!
文章にしろ、文章に!

私は立ち上がると
スポーツバックの横に用意しておいた
お風呂セットを手に持った

「どこで寝る?」

部屋から出ていこうとした私に
大男がぼそっと呟いた

「どこだっていいよ」

「わかった」

私と海堂彰吾は同じ部屋だった
客用のシングルベッドが一つと
客用布団が床に敷いてあった

用意したのは私の姉・花音だ

のそのそと歩く大男は
敷き布団の中に足を突っ込んだ

「ちょ…もう寝るの?」

「もう8時だ」

さすが中学生
…って普通の中学生でも8時には寝ないだろ

しかも風呂上がりで
大男の髪は濡れている

「そのまま寝るの?」

「変?」

「髪、乾いてない
風邪をひくよ?」

「凍らないから平気」

は?
凍らない?

どういう基準なんだ?

海堂彰吾は枕に頭を置くと
すぐに寝息が聞こえてきた

はやっ…


< 8 / 133 >

この作品をシェア

pagetop