妹の恋人は姉の彼氏の従弟

女の影

苛々した心のまま
私は家に帰った

玄関には見慣れない靴が一足

その横には
海堂の皮靴が並んでいた

あの子も一緒に?
部屋に連れ込んだ?

私は部屋のドアを開けると
海堂と手をつないでベッドに座っている女が
顔を勢いよく上げた

女と目が合う

私はそらすと
学生鞄を置いた

「今日は制服?」

女と手を繋いだまま
海堂が質問してきた

ジャージで帰るのが嫌だった

なんか負けた気がしたから

制服を着て帰れば
海堂があの女に向けた笑顔以上の
笑みを見られると思った

だから
滅多に着て帰ってこない制服を着てみた

普段よりスカートを短めにして

でも無意味だったようだ


海堂は目を細めて見てくるだけで
私が部屋に入ってくるのを
迷惑そうにしているように感じた

床に置いた鞄だったが
また掴むと
海堂の目を見た

「邪魔?」

私は笑顔で聞いた


海堂は私から視線をそらしただけで
なにも言わない

女も下を向いてしまって
会話が進まなさそうだった

「居間にいるので
どうぞ、ごゆっくり」

私はそう言って
部屋を出た

むかついた
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