Ki・ro
真崎には、既に年上の妻がいた。


真崎の大学院時代を金銭面でも、精神面でも支えてくれた糟糠の妻というのが、社内でのもっぱらの噂である。


聡明で綺麗な女性だということは真崎の口からも幾度となく聞いていた。


「そんな、素敵な奥さんがいらっしゃるのに


どうして、私なんかと浮気をするの」


そんなことを真崎の腕に抱かれながら聞いてみたことがある。


「できすぎた嫁を持った夫も辛いってことかな・・・・」


自嘲めいて、フンと苦笑いした真崎の横顔が想像以上に暗くみえた。


葵はそれ以上のことは、聞けなくなった。



秘密の


いわゆる不倫の関係。


テレビドラマで見たような、メモを受け渡し、出会いの時間を知らせ合う。



最初は、ドキドキとした行為も、三年も過ぎれば手あかのついた


「後ろめたい」行為に過ぎなくなる。


なれ合いのように、月に数度おきまりの店で会い、ホテルへと向かう。


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