青春ing
 就活中というだけあって、大学に入ると同時に茶色になっていたなな姉の髪は、元々の黒い色に染め直されていた。真奈瀬と同じ色だ。顔立ちや背格好が似ている彼女達の違いを挙げるなら、姉はふわりとしたショートボブで、妹はストレートロングだってことだろう。

 今年の春は花柄が流行りだけど、彼女は服に取り入れるんじゃなく、白いハットに色違いでピンク・淡いオレンジの大小のコサージュを付けるという自己流アレンジをしている。エメラルドグリーンをした薄手のニットのアンサンブルとジーンズというシンプルな装いだから、ハットが主役になってスッキリと仕上がっている。モデルをやっている俺には、よく分かった。



「美隼とは三年振りくらいだったよね?元気そうで良かった。」

「うん。なな姉こそ、元気そうで安心したよ。」

「お姉ちゃんお帰りー!!」



 落ち着いた喋りのなな姉は流石長女といった感じで、真奈瀬のようについつい声が大きくなることは少ない。昔はよく、一人っ子の俺がなな姉と一緒に真奈瀬のお守りをしたなぁと思い出したら、なな姉が俺を見て微笑する。もしかしたら、今の思考が筒抜けだったのかもしれない。
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