青春ing
「……へぇー。真奈瀬、そういう奴居たんじゃん。なら、なな姉に色々アドバイスもらえば良いのに。」

「や、あの……」

「俺じゃ大したことも言えないもんなぁ。久し振りに会えたんだし、じっくり話聞いてもらえよ。じゃあな。」



 真奈瀬が何かを言いかけていた気がするけど、俺は半ば強引にその場を去った。なな姉が何も言ってこなかったのは、間接的にではあるけど俺がフラれたからだろうな。頭の良い人が居ると、本当に助かるよ。

 石川姉妹の家とは目と鼻の先にある自分の家へ、足早に帰った。「あら、今日は早いのね」と言う母親への返事もそこそこに、自室に入って鞄を床に投げ置く。ベッドにダイブしたら、全身の力が蒸発するように抜けていった。



「……結局俺は、“何でも話せる幼なじみ”にすらなれないってわけか。」



 距離が開いてしまったんだから、しょうがないことなのかもしれない。でも、“ただの幼なじみ”はあまりにも辛い。少なくとも、俺にとっての真奈瀬はそんな単純な存在じゃないんだから。



「何かのバチが当たったのかもな……」



 口から出るのは、暗い言葉と重い息ばかり。でも、不安のスパイラルに呑まれることは望まない。

 俺にできることは、真奈瀬が少しでも上手くいくように協力してやることだけだ。だったら、精一杯やってやれば良い。それがあいつの幸せに繋がるなら、俺はいくらでも嘘をつけるだろう。

 ――心が落ち着いたら、視界がブラックアウトしていく。時を刻む音も、ゆっくりと消えていった。
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