青春ing
 古典・数学と授業は進み、昼休みの教室は、みんなの話し声でとても賑やかになる。あたしと香子も、机をくっつけてご飯を食べながら、次の大会への戦略を立てていた。



「ウチらも、もう3年だよね。他校は絶対、こっちの研究してきてると思うのよ。配球読まれると厄介だから、そこは考えといた方が良いよね?」

「お、香子が珍しく頭脳派なこと言ってる。阿部君みたいじゃん。」

「……あんたはまたそれか。ほんと好きだねぇ、『おお振り』。」



 呆れたような視線を向けてくる香子に、ニヤけるあたし。野球漫画の『おおきく振りかぶって』(ひぐちアサ著)は、何を隠そうあたしのバイブル。あの“野球が俺達の全て!”って雰囲気が、もう堪らない。恋もほんのりって所も、また良いんだよね。



「当たり前でしょ?あたしの毎日は、部活と上野選手への憧れと『おお振り』で成り立ってるんだからね。」

「ちょっと、学生の本業は何処行ったのよ?」



 だから成績が微妙なんだよ、田島や三橋みたいに。そう口にした香子は、確実にあたしの影響を受けているらしい。その調子で、もっと『おお振り』を好きになってくれ。
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