青春ing
 あぁ、どうしよう……そんなことを思っている内に、午後の授業が始まる。先生が口にしている言葉は、BGMにもならない。全然耳に入ってこなかった。

 部活にも、当然身が入らない。みんなが珍しがって、さっちゃんも「あんた、今日はもう帰りなさい。体調崩して寝込まれる方が困るから」と心配してくれた。

 調子が悪いのは、決して体調不良のせいじゃないんだけど……今日は何をやっても上手くいかないような気がして、みんなの優しさに甘えて頭を下げた。



「ちょっと佐桜花。あんた、何をそんなに悩んでるわけ?」



 帰り際、小声で話しかけてきたのは香子だ。何年も相方やってるんだから、分かってる筈なのに。



「だって……そんなお洒落して会いに行ったらデートみたい……」

「何言ってんの?デートに決まってるじゃない。ていうか、そんなに緊張するからいけないのよ。
あんたの場合はデートだと思わなくて良いから、ただ親睦深めるためって思っとけば良いんじゃない?“友達増えるのは嬉しい”んでしょ?」



 そっか……なるほど、友達と遊びに行くって気持ちで行けば良いのか。それにしては、変にお洒落しすぎな気もするけどね。女の子らしい格好もしてみたいし、相方に任せてみよう。



「……香子様、お願いします。」

「了解した!じゃあ、今日は帰ってゆっくり休んでね。」



 ポンと肩を叩かれて、送り出される。更衣室で制服に着替えながら、ふと和屋君のことを思い浮かべた。

 あの子、あたしの何処を気に入って慕ってくれてるんだろう……全然分かんないや。
< 57 / 129 >

この作品をシェア

pagetop