青春ing
「――何か山沖、最近女っぽくなったよな。」



 クラスの男子が、突然そんなことを言い出した。彼氏ができたからって色気づきやがって、なんて言われたけど、心の中では祝福してくれているのが分かる。草野球の試合で人数が足りない時に助っ人で出たことが何度かあったから、野球に関わってる子達とは、基本的に顔見知りなんだよね。



「え、何それ。佐々木、視力落ちたんじゃない?」

「バカ、誉めてんだよ!つーかお前、私服も意外と可愛いんだってな。本田がさ、この前彼氏と歩いてんの見たって言ってたぞ。」

「あ、それ俺も見た!スポーツやってる山沖しか知らないから、ちょっとびっくりしたっつーの。」

「三笠まで何言ってんの……」



 男子達とこんな話をする日が来るなんて、思ってもみなかった。もしかしたら、その内恋愛相談なんかもされちゃったりして。まぁ、良いアドバイスができるかどうかは分かんないけど、そういうのって良いなぁ。

 女の子達との“それ分かるー!”なやり取りも好きだけど、男の子達との“自分はこう思う。お前は?”みたいな会話も面白い。だから、色んな人の話を聞きたいな。きっと、自分にとっての宝物になる筈だから。



「山沖に彼氏かぁ……高須賀、がっかりすんだろうなぁ。」

「え、何で?」

「何でって……あいつ、絶対お前のこと好きだろ。そうじゃなくても、お気に入りだと思うぜ。」

「だよなぁ。つーか、山沖気付いてなかったのかよ?」



 鈍感すぎんだろ、なんて、佐々木と三笠は笑うけど。どう反応して良いか分からなくて、とりあえず自分も笑っておいた。
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