青春ing
 ――すぐには理解できなかった。少し経ってからやっと、みんなの“何なの?どうしたの?”という視線で、我に返る。

 友達だと、思ってたのに。あたし達って、バカなこと言って笑い合うような関係じゃなかったの?

 でも、高須賀の気持ちがどうであれ、それは誰かを攻撃して良い理由にはならない。何で、そんな簡単なことが分かんないのかな。ダメだ、これ以上顔を合わせてたら、良い球なんて投げられない。



「……帰って。」

「……え。」

「帰ってくれないかな。悪いけど、今は高須賀の顔、見たくないから。」



 人に優劣を付けるなんて、最低だ。言葉を選んでいる暇なんてなかったから、あたしもつい、キツい台詞が出てしまった。これじゃあ、高須賀に言えたもんじゃないな。

 でも、謝る気なんて更々ない。その内高須賀は、眉を下げたままグラウンドを後にした。



「……ちょっと佐桜花、どうしたの?」



 香子が走り寄ってきて、あたしに尋ねる。理由を説明するのも腹立たしくて、「ごめん、また今度」と突っぱねてしまった。それでも相方は、静かに「……分かった」とだけ口にして、「さて、部活やろー!」と、みんなの士気を高めてくれた。

 ――大事な友達を、一人失ったのかもしれないな。心の中で呟いてみても、胸の内側を覆うモヤモヤは全然晴れなかった。
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