【実話】ありがとう…。
~翌日~

朝起きて鏡を見ると、尋常じゃない位に腫れ上がった目―。


瞼が重くて、いつもの半分位しか開いていない。


「こんなにダメージ受けるとは思わなかった…」


心の中に、大きな穴が開き、冷たい風がビュービュー吹いていた。


「何もしたくない…手につかないよ」


ただボーッと窓の外の景色を眺める―。


足早に歩いている人。

女子高生や男子高生が、楽しげに通り過ぎて行く。


時間が長く感じた。


「たかさんと居た時は、1日が24時間が足りない位だった。足りなかった時間が、今は、こんなにも長く辛いなんて…」


そう思うと、胸が締め付けられ、呼吸が苦しくなる。


苦しくて、苦しくて涙が溢れ出す。


涙を拭う事もせず、ただただ時間が過ぎるのを待つしかなかった。


この日、私は部屋から一歩も出る事もせず、窓の外の景色を日が暮れるまで眺めていた―‐…。








~数週間後~

少しずつ気持ちも落ち着き始めた。


ふとした瞬間にたかさんを思い出す。


街を歩いていて、擦れ違う人の香水の香り。


「たかさん」

一瞬そう思い、辺りを見回す。


「居るはず無いのに…」


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