落日
優しい笑みを残してその場を立ち去ろうとする副社長を私は呼びとめ、そして尋ねた。
「あの……、社長が飼っている鳥は、どんな鳥ですか?」
すると副社長は、こちらを振り返ろうともせず、背を向けたまま言った。
「――……燕だよ。雄の、燕……――」
遊びに出たまま帰ってこない、雄の燕。
それを待ち続ける社長と、番の燕でも見つけたんだろうと言う副社長。
その真意は誰も、分からない。
社長が戻ってきたのは終業時間の直前だった。
社長室に篭り引き続き仕事をしている社長に、私は副社長が尋ねてきたことを報告した。