落日
階段のところどころにある、壁に開いた小さな窓から見える景色。
その景色が徐々に遠くなっていくたびに、頂上に近づいていることが分かる。
けれど、普段から運動とは無縁の生活を送っている私には、この階段はやはりきつい。
意外と体力のある香織は、あれだけ嫌がっていたくせに、軽快な足取りで階段を上り続けている。
「依子? 大丈夫?」
一番最後に上っていた私は、息を切らせながら階段を上る足を止めた。
「ごめん、先に行って? 私、ゆっくり行くから」
「付き合うよ?」
香織は上る足を止めて、壁に寄りかかった私のすぐそばまで戻ってきた。