落日
「大丈夫だから、先に行って。私に付き合っていたら、夜になるよ?」
階段を上る香織のペースを狂わせたくなくて、私は何度も先に行くように勧めた。
香織は迷っていたけれど、
「じゃあ、上で待っているから」
そう言って、ポケットの中に忍ばせていたキャンディを私に渡すと、さっきと同じペースで階段を上り始めた。
香織の姿が見えなくなると同時に、たまっていた疲労感が一気に襲ってきて、私はその場にしゃがみ込む。
私を避けるかのように階段を上り下りする観光客。