落日
社長の言葉が頭のなかを駆け巡る。
私は唇が震えるのを感じながら、彼にカマをかけてみる。
「客を怒らせたからクビだなんて……あり得ない。そのバイトの人、かわいそう」
すると彼は、周囲をぐるりと見渡したあと、声をひそめて真実を語った。
「そのお客様っていうのが、取引先の社長だったんです。元々うちの店は、卸業が本職で……。その社長の会社と取引があるからこそ、うちの会社はもっているようなものなんですよ」
「――その……取引先の会社って……」
彼は、さらに声を小さくして言う。
「月島グループです。……そこの女社長に睨まれたら大変ですよ」
一瞬、眩暈がした。
同時に、呼吸のしかたを忘れてしまったかのように、私の息は乱れ始める。