落日
九時。
時間に縛られない生活を送っている私にとっては、気にもならない時間帯。
『大丈夫?』
躊躇している私に、聡は同意を求めるような口調で訊いてきた。
「……うん、大丈夫」
『じゃあ、うちの店の前に来て。俺、いま店にいるから』
「あっ……」
聡はそれだけ言うと、私の返事など聞かずに一方的に電話を切った。
――なんて強引な人なんだろう。
でも、嫌じゃない。
昼間に香織と出かけた時の服そのままでいた私は、鏡で全身をチェックすると、足早にカフェへと向かった。