落日
私の頭には存在さえしなかった、ローマでの挙式に決まってしまった。
きっと誠司は、意図的にそうしたんだろう。
ヴェッキオ宮とフィレンツェから、私を遠ざけた。
私に現実に戻ってほしくて。
私が生涯の愛を誓うのは、自分なのだ、と。
旅行会社を出たあと。
私と誠司は近くのカフェでお茶をしながら、これから迎える結婚生活について語り合った。
キラキラと喜びに満ちている、誠司の顔。
今の私は誠司と同じ顔をしているのだろうか。