落日


『えっ? 大丈夫か? 病院には行った?』

「ううん。ゆっくり眠ったおかげで、今日は体調もいいみたい」


嘘をついている私の声は、自分でも分かるくらいに上ずっている。


『声がおかしいぞ? 今日もゆっくり休んでいた方がいいよ』


誠司はそれを嘘が原因ではなく、体調が悪いからなのだと指摘する。


「……うん。ありがとう」


嘘つきで裏切り者の恋人を気遣う誠司は、早々に会話を切り上げた。

出張から戻ったらそのまま依子の所に直行するよ、と、ありがたい言葉を残して。


誠司に後ろめたさを感じながらも、電話を切ってすぐ、私の身体は即座に次の行動へと移る。

昨日着ていた服をすべて脱ぎ捨て、向かった先はバスルーム。


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