落日
マンションに着き、エントランスから部屋のインターホンを押すと、聡は起きぬけの声で返事をした。
聡が開錠した自動ドアをすり抜け、エレベーターに乗り、部屋へと向かう。
部屋のドアは聡が先に開けてくれたらしく、私は主の出迎えもなしに遠慮がちに中へと入った。
「おかえり」
ベッドのうえに寝そべったままの聡は、ぼんやりとした目で私を見る。
私は呆れたように溜息をつき、バッグを足元に落とすとベッドに向かい、聡のそばに座る。
「……ね、お腹すかない? もうすぐ九時になるけど」
「……さっきから腹の虫がグルグル言ってる」
眉間に皺を寄せ、聡は極限にまで空腹になっていることを告げる。
「私、なにか作ろうか?」
そんな聡に、差し出がましいことをつい口走ってしまう。