落日
普段どおりの化粧をして、肩まである緩やかなウェーブの髪にワックスをつけて。
クローゼットを開けて最初に目についた服に袖を通すと、私は鏡でもう一度、自分の姿をチェックして部屋を出た。
さっきと同じ通り道を足早に歩きながら、聡のことを考える。
昨日はお互いのことを何も訊かなかったし、話すこともなかった。
聡が住んでいるマンションを見て思ったことは、聡と私が同じ生活レベルではないということ。
カフェの仕事だけで、あんなマンションに住めるはずがない。
両親が莫大な資産を所有していると見るのが一般的だろう。
それかもしくは、聡自身が、私には想像もつかないような遠い存在の人間であるか。
どちらにしろ、私と聡のあいだには、目に見えない大きな壁が存在しているようにも思えた。