恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
江波さんが聖母のように深く穏やかで暖かい微笑みを見せた。

「………」

だけど、あたしは目を逸らして返事もしなかった。それは見苦しい悪あがきだった。

「間宮さんだって、実際子どもが産まれたら、絶対その子を放したくなくなると思うわ」

「あたしには……母親がいないので皆さんの気持ちは分かりません」

「間宮さん……」

あたしを見る江波さんの目は間違いなく哀れみのソレだった。


そのとき、あたしの中に静かな怒りがどんどん込み上げてきた。そしてその怒りはアッという間に臨界点を超えた。

「なによっ。そんな目であたしを見ないでっ。みんなで寄ってたかったヒトの夢をブチ壊して、そんなことしてなにが楽しいのっ?」

「毬ちゃん、誰もそんなつもりじゃ…」

「毬さん、キミには本当にすまないことをしたと思ってるよ……」

「“すなないと思ってる”って……ヒトのことを傷つけて、ヒトの夢を壊しといて、それで済むと思ってるワケっ?」

「いや、もちろんそんなこと思ってないさ。だけど…」

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