恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~


でも危うくあと30センチのところで難を逃れた黒ネコは…、

「にゃあ」

…と、なにごともなかったような顔でひと鳴きすると、あたしの前からさっさといなくなってしまった。

「ふぅ…危ない、危ない……」

あたしは右手の甲で額の冷や汗を拭った。

むかしから“黒ネコが前を横切ると不吉”っていうけど、今日のあたしはなんも心配してない♪

だって今日は12月25日♪♪

サイコーの1日になるはずだから♪♪♪



病院を出てから15分後―――

あたしは『屯(たむろ)』っていう名前の喫茶店の前に到着していた。

「えっ!?」

外から店内を覗いたあたしは思わず声を上げてしまった。

カーテンが全部閉まっていて、店内に照明が点いているような感じもなく、そもそもヒトの気配がまったくしないんだ。

「ウソ……まさか今日、休みとか……?」
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