恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
第3話「あたしを見つけてくれたヒト」
甘い誘惑に負けて、明東大学サッカー部の応援をすることになったあたしは、バックネットをまわってグラウンドの内側に入り、控えの選手たちがいるベンチのほうに移動した。

「そーいえば自己紹介がまだだったね? あたし、明東大学サッカー部マネージャーの須永郁巳っていうの」

「スナガ……イクミ……って!?」

はじめて聞く名前じゃない。

「えっ? あたしのこと知ってるとか?」

「あたし、毬。間宮 毬」

「“マミヤ・マリ”って、アノまりっぺ!?」

「うん。あたしが小1のとき、郁巳おねーさんは小6で毎朝、集団登校のとき、手をつないで歩いてもらってた」

でも彼女は学年でいえば5コ上で、あたしがまだ小学生でいるあいだに、中学生になり、そして高校生になってしまい、結局のところいっしょに学校に通えたのはたったの1年という短い期間でしかなかった。

それでも一人っ子のあたしにとって郁巳おねーさんは本当の姉みたいな存在で、あの頃、あたしは彼女のことが大好きだった。

いや、今でも大好きだと声に出して言える。

あの頃から面倒見のいい“おねーさんキャラ”だった彼女なら、運動部のマネージャーになるのも納得、って感じがする。


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