恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
それなのに、“おいしいケーキ”という言葉に喰いついてしまった。


「じゃ…じゃあ、もし負けたら?」

「勝利の女神さまの三つ編みちゃんがいれば100%負けるはずないわ♪」

自信満々の彼女。

「ま、ありえないことだけど、もし仮に試合に負けたとしても、最後まで残ってくれたお礼にケーキはおごってア・ゲ・ル♪」

「………」

「試合を最後まで見てさえいれば、おいしぃぃぃケーキが食べられるんだよ。どぉ? 悪いハナシじゃないでしょ?」

「………」

“まぁ、どーせ家に帰ってもすることないんだし、それなら、ココにいてケーキをごちそうしてもらったほうが断然おトクじゃん♪”

…と瞬時に計算したあたしは…、

「分かりました」

…とだけ無愛想に答えた。


そのときは“これで週末の予定が埋まった”くらいにしか思っていなかった。

けど、あとになって考えてみると、あたしの運命が大きく変わってしまったのは、まさにこの瞬間だったのかもしれない――――

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