恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
第7話「白昼夢のオトコ」
「まもなく3番ホームに新木場方面行き電車が参ります。危ないですから白線の内側まで下がってお待ちください」


いつもの時間、いつも決めている乗車口から乗り込むと、いつものように地下鉄は発車し、そしていつものトンネルに潜り込んだ。

今朝の車内もいつものように、サラリーマンやOL、学生たちで超満員状態。

「…!」

ふと視線を感じて窓のほうを見ると、じっとあたしのことを見ている少しやつれた感じのする若い女のヒトと目が合った。

いや、よく見ると、ソレは窓ガラスに映ったあたしだった。

朝はまだはじまったばかりだというのに、すでに疲れ果てたような自分自身の姿に、あたしはたまらず視線を逸らした。

すると吊り革をつかんで立つあたしの前で、席に座っている女のコが視界に入った。

今年の春まであたしが着ていたのと同じ“明東大学附属高校”の制服を着ている女のコ。

ほっぺたも、スカートの裾からハミ出した太モモもパンパンで、そのはちきれそうな若い肉体が、ひどく自分とは対照的に思えた。

何げに彼女が読んでいる本の紙面に目を移すと、そこには数学の公式が書かれていた。

そーいえば、そんな公式あったよね……。




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